研究概要 |
高等植物細胞には, ATP依存のホスホフルクトキナーゼ(ATP-PFK)のほかに, ピロリン酸依存のホスホフルクトキナーゼ(PPi-PFK)が依存する. 本研究で, ニチニチソウの培養細胞のATP-PFKとPPi-PFKの性質を検討した結果, 前者は, エネルギーチャージにより調節がおこるのに対し後者は, フルクトース2.6ビスリン酸(F2.6BP)や無機リン酸(Pi)により活性が調節されることが明らかにされた. 培養中どの時期でもPPi-PFKのレベルは, ATP-PFKのレベルの約3倍であり, 呼吸が盛んな時期にPPi-PFKのレベルも増加した. また, 細胞内のPPi,F2, 6BPのレベルの測定結果から, PPi-PFKがATP-PFKと共にin vivoで解糖系の構成酵素として働きうることが示された. ニチニチソウの培養細胞における全解糖系酵素のプロフィールを調べた結果, ヘキソキナーゼとピルビン酸キナーゼのステップが律速反応となる可能性が推定された. ニチニチソウの培養細胞には, 三種のヘキソキナーゼが存在し, そのうち高い活性をもつ二種について詳細に検討した結果, 一方は, グルコースもフルクトースも基質として用いる狭義のヘキソキナーゼであるのに対し, もう一方はフルクトースに特異的なフルクトキナーゼであり, それぞれスクロースがインベルターゼ分解された場合と, スクロースシンターゼにより分解された場合のヘキソースのリン酸化を, 触媒するものと考えられた. 前者は, ATPレベル, 後者は, VTPやPPiレベルによって調節がおこる. 解糖系活性をPiなどのエフェクター濃度で変えた場合, F2.6BPやPPiレベルに変化がみられることから, 植物では, PPi-PFKの活性調節も解糖系の流量の制御に関与している可能性が明らかとなった. PPi-PFKと細胞のもつ生合成能との関連についても考察した.
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