研究概要 |
海藻類で固有のホスト植物を持ち, 真正着生藻と考えられる種類について, それらの生長と形態形成に及ぼすホスト植物の意義, 形態形成物質の有無と物質の取込み機作について, 代表的な3種を選び, 培養, フィルド実験及び微細構造の観察による研究を行った. 1.緑藻モツキヒトエは常に海草スガモ上に着生しているが, フィルド及び培養実験から, 人口基物ポリプロピレンひも上にも着生し, 正常な形態形成がみられた. ホストからの化学的因子の存在も無菌二員培養によって否定され, 本種の海草スガモ上での生長は主として波動効果など物理的要因によるものであることから, 真正着生藻ではないことが明らかにされた. 2.褐藻エゾブクロは特定のホスト植物(褐藻ウガノモク)を持つ. 有性生殖はホスト植物上でのみ誘導され, 更にその接合子発芽体がホスト組織内に仮根を侵入させ, ホスト代謝物を仮根細胞を通して受動的に取込むことによってのみ, 嚢状胞子体の形態形成が進行し, 生活環が完結することが考察された. エゾブクロは典型的な真正着生藻であり, 仮根は単なる付着器官ではないことが示された. 3.緑藻アワミドリは特定のホスト植物はない. 培養ではホストを必要としないが, 固着器官の分化がなく, 天然ではホストが不可欠となる. ホスト組織への自力での侵入力が弱いため, 質の柔軟で粗密な表面の海藻が任意的なホストになる. しかし傷の付いた海藻はどのような種類でも, 本種の侵入が可能となりホストになることが明らかにされた. 以上の結果から, 従来の分類学的考察で漠然と着生藻及び内生藻とされてきた種類について, 厳密な定義方法と, 着生藻の仮根の機能機作, 海藻の栄養要求と形態形成についての研究の基礎が作られた. 今後形態形成物質の同定とその取込みをさらに研究いていく.
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