研究概要 |
真核細胞の生理機能を調節する細胞骨格は, 決して多岐に亘ことはない. その骨組みは, まず例外なく収縮性蛋白質の分子配向によって配列された微細繊維系又は微小管として構築されている為に, 光学的異方性を示す. 従って光の波長より小さい次元で微細構造による分極率の差, 即ち複屈折性が生起するが, 屈折率の差が僅かであったり, 又は解像能の限界を超える微細構造である場合は, 高感度偏光顕微鏡又は高感度暗視野・蛍光法によらねば像としてとらえることができない. しかし, 低照度である為に, 光学的に又は電気的にコントラストを増幅して感度を上げ, 解析可能な画像を連続記録し, しかも観察終了後直ちにプレイバックできる系の開発が望ましい. これは高感度・高解像光学系と, 高忠実・増感ビデオカメラに画像処理装置を組み合わせることで解決できるはずである. もちろん困難も多かったが, 私達はこの系の開発にほぼ成功した. この系は, 従来のタイムラプスシステムに比べ, 実験効率を高めることができた. 私達は, これ迄解析してきた有糸分裂機構と初期発生, そして更に各種の細胞運動モデルを対象に, 細胞骨格の微細構造と分子機構の相関を検討した. そしてできるだけ容易に, かつ安価に信頼できる画像解析用のシステムを組んで, 生体直接に問いかける偏光解析を行いたいと意図し, ほぼ初期の目的を達することができた. しかし, 各種実験を試行しているうちに, このシステムの感度と解像能を更に向上させる必要が生じた. 予想外の早さで, 研究方法が進んだからである. 現在, 試験研究I(課題番号62890004)に引継ぎ, 改良を行いつつある.
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