研究概要 |
6目29種のウニ卵ゼリーより70%エタノール抽出液を調整し、バフンウニ(ホンウニ目に属する)精子への呼吸促進活性を検討した結果、ホンウニ目に属する16種の卵ゼリー中に呼吸促進活性を示す物質の存在が示唆されたが、他の5目(ヤワラウニ目,ガンガゼ目,アルバシア目,タコノマクラ目,ブンブク目)に属するウニ卵ゼリーにはバフンウニ精子の呼吸促進を引き起こす活性は認められなかった。またホンウニ目に属するウニ卵ゼリーのバフンウニ精子呼吸促進活性の程度も種の属する科によってわずかな違いが認められた。これらの事実から、ウニ卵ゼリー中に存在する精子活性化ペプチドの構造には分類学上の"目"のレベルで大きな違いがあり、同じ目内の種でも生理活性上は大きな違いはなくても構造にはわずかな違いがあるペプチドの存在が予測され、それを実証した。ホンウニ目に属するウニにはsperact類(【Thr^5】-speract,【Ser^5】-speract,【Ser^(3,10)】-speract,【Ser^(3,5,7)】-speract,【Ser^1】,【Ala^3】,【Gly^5】-speract,【Ala^3】,【Gly^5】-speract,【Ser^3】,【Thr^5】-speract,【Ser^(3,5,7)】,【Asp^(10)】-speract,【Thr^5】,【Gln^(10)】-speract,Des-【Gly^1】-(【Thr^5】,【Gln^(10)】-speract)が存在し、アルバシア目のウニにはresactおよびalloresactが、タコノマクラ目のウニにはmosact類(Des-【Gln^6】,【Asn^7】)-(【His^6】)+mosact,Des-【Gln^6】,【Asn^7】-(【Phe^6】)-mosact)が存在する。これらの特異的精子活性化ペプチドはその作用時には精子細胞膜上に存在する特異的なレセプターに結合するが、speractを用いた実験より、そのレセプターは精子の尾部に局在することが明らかになった。精子尾部のレセプターに結合した特異的ペプチドは尾部細胞膜に局在する高分子タンパク質の低分子化を引き起こすことが調べた全ての種で確認された。この低分子化には【Na^+】の存在が不可欠であった。特異的ペプチドによる精子呼吸促進に【Na^+】が必須であることから、この低分子化と呼吸促進との関係を明らかにすることが今後の課題である。
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