研究概要 |
3種類の家禽(ニワトリ, ウズラ, アヒル)を用いて, 鳥類の胚期生殖腺ホルモン(性ステロイドとミュラー管抑制物質MIS)の性質と機能についてミュラー管(M管)の分化における役割う中心に研究をおこない, 次の成果と知見を得た. (1)胚期の血中の性ステロイドホルモン:雌ではエストラジオール, 雄ではテストステロンが主で, 共に胚期の1/2頃に検出可能になり, およそ3/4の時期に最大値に達した後, 急速に減少する. (2)胚期生殖腺のMIS活性:精巣はウズラでは6〜10日胚, ニワトリでは6〜12胚, アヒルでは9〜18日胚の期間に強い抑制活性を示した後, 徐々に低下する. 雄胚のM管はウズラでは8〜10日, ニワトリでは9〜12日, アヒルでは10〜13日の期間に退化するが, 雌胚ではM管がMIS感受性を失った発生後期に, 左卵巣は中程度の抑制活性を示す. 右卵巣の活性はウズラとニワトリでは検出されないが, アヒルでは認められる. (3)ミュラー管のMIS感応期:M管がMISに感受性を示す期間は短かく, 器官培養実験の結果から, M管のMIS感応期は, ウズラでは62/1〜9日胚, ニワトリでは8〜9日胚, アヒルでは9〜11日胚と推定される. このM管のMIS感受性は, エストロゲン処理により低下する. (4)MISの循環ホルモン効果:ウズラ及びニワトリで, 雌胚の漿尿膜上に移植した胚精巣により宿主M管が退縮し, また, 雄胚の漿尿膜上に移植した雌M管も退縮することから, 血中に有効量のMISが存在し, 循環ホルモンとして作用可能なことが示唆された. (5)M管とMISの特異性:鳥類のMISは哺乳類のM管を退縮させるが, 鳥類のM管は哺乳類のMISでは退縮を示さない. (6)発生器官及び発生中枢の性的二型化:アヒルの鳴管及び延髄舌下神経核は, 胚期に卵巣エストロゲンにより発育を抑制され, それにより雌雄差が生じ, 性的二型化することが示唆された.
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