研究概要 |
本研究に供試した導入天敵チリカブリダニPhytoseiulus persimilisの2系統は、何れも研究代表者の教室にて系統維持に成功している。第一の系統はカリフォルニア大学生物的防除部門(Riverside)より1967年に導入、全(薬剤散布をうけていない個体群(UCR系統)であり、他の系統は西ドイツDarmstadtの生物的有害動植物防除研究所より、1984年に導入した薬剤抵抗性個体群(DAS系統)である。 園芸作物に5薬剤(殺虫・殺菌剤)について、DAS系統はfenitrothion,carbarylおよびchinomethionatにおいてUCR系統より感受性が低かった。acephateは感受性が高く、permethrinは感受性が極めて高かった。R/S比(LC50値でみたDAS/UCRの比)はfanitrothionが最も高かったが、LC50値でみるとchinomethionatが最も高かった。 農薬散布下のビニールハウス内キュウリで、DAS系統によるナミハダニの防除試験を実施し、DAS系統はfenitrothion散布を反覆することにより、感受性が低下することを明らかにした。殺菌剤7回、fenitrothion4回散布条件下のビニールハウスでDAS系統はナミハダニ個体群の増殖を制御した。キュウリにDAS系統放飼後、7日目,10日目のfenitrothion散布は、DAS系統放飼・薬剤散布区とほゞ同様の抑制効果を認めた。経済的被害許容水準(LDI)からみて、カブリダニ放飼時期はキュウリの被害指数1.0程度が妥当と考えられた。放飼比率は(ナミハダニ成虫:チリカブリダニ成虫)10:1で防除効果が得られた。 本試験に適合するシミュレーションモデルを検討し、実測値の平均気温とDAS系統の放飼後の定着率の2点を修正することにより、本試験の成果と一致する理論値が得られ、モデルの有効性が実証された。
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