研究概要 |
(1)菌類寄生ウイルス:重要植物病原菌を主に103属200種の600余菌株について菌類ウイルスの探索を行ったところ、35種の菌で41種の未記載ウイルス,6種の菌で7種の既知あるいは本邦未記載ウイルスが見出され、自然界には菌類ウイルスが広く分布することが知られた。菌類ウイルスの探索にはDN法が極めて有効なことが立証された。本研究のウイルスの多くは寄生菌から純化され、それらの形状,理化学的性状を調べ、多成分性を示すウイルスも多く認められたが、これらは含まれる核酸ゲノムの違いによると思われた。8種のウイルスでは2本鎖RNAをゲノムとすることが知られた。4種のウイルスでは2層のcopsid構造が示唆され、うち2種では多面体の頂点に12個の突起がみられ、これは分類学上重要な知見と思われた。7種のウイルスについては純化試料を用いて抗血清を作製し、各ウイルス間で血清学的性状を調べたところ、2種のウイルス間で相互に血清反応がみられた。各ウイルスの細胞内所在を観察したところ、通常細胞質や液胞内に散在,集塊,結晶して認められた。2種のウイルスでは細胞質に特異的マトリックスが観察された。菌類ウイルスは粒子サイズと性状から25-30,35-45nmの2群に分けられた。(2)菌類伝搬ウイルス:Olpidium,Polymyxaなどで土壊伝染される10種の植物ウイルスについて、野外での発生を調べ、DN法および改変DN法でウイルス粒子の形状を観察し、一部のものについては純化し、理化学性を調べ、さらに細胞内所在様式を観察し、各ウイルスの分類的位置付けを行った。その結果、桿状ウイルスは(a)SBWMV,BNYVV,BNMV群,(b)BYMV,WYMV群,(c)LDVV,TSV群,球状ウイルスは(a)TNV群,(b)PSNV,MNSV群,(c)SV群にそれぞれ大別された。これらの分類群より、菌類伝搬ウイルスの多様性が明らかになった。
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