研究概要 |
本研究は(1)種々の塩生植物あるいは耐塩生の強い植物の収集(植物体および種子)および水耕栽培, (2)植物の耐塩生機構および塩生植物の栄養生理的特性の解明, (3)塩生環境下における土壌養分の動態の把握を目的として行なったもので, これまでに得られた成果の大要はつぎのとおりである. (1)瀬戸内の塩田跡地, 西表島の湖間帯(マングローブ樹林帯), タイ国の塩類集積地域を調査し, 多数の植物試料を収集するとともに, それらのうちのいくつかの植物種について水耕栽培法を検討し, 栄養生理の研究に供した. その中でも従来困難とされていたマングローブの水耕に成功したことは特筆に値する. (2)塩生の双子葉植物としてホソバノハマアカザ, 広塩性の単子葉植物としてヨシ, マンゴローブの一種であるオヒルギを水耕栽培し, 耐塩生機構をしらべたところ, それぞれ特徴のある対応をしていることがわかった. ホソバノハマアカザは外液からナトリウムを吸収してこれを液胞中に集積し, 細胞質中にはベタインを集積して細胞の膨圧を維持するが, ヨシは外液中にナトリウムが高濃度存在していても, 体内へのとりこみは少なく, カリウムとショ糖で浸透圧を作出していることが判明した. オヒルギについては現在研究中である. ホソバノハマアカザは外液のナトリウム濃度が高いと細胞内のカリウム含量がかなり低下するが, ホソバノハマアカザのカリウム依存性酵素の一つであるピルビン酸キナーゼのカリウム要求性は一般の非塩生植物とかわらなかった. しかしベタインが存在するとカリウムの要求性は低下した. また海水中のホウ素濃度は高いが, ホソバノハマアカザのホウ素含量, 耐ホウ素性は高く, 塩生植物の栄養生理的特性の一つと思われた. (3)塩生環境下の地力窒素の動態をしるために有機態窒素の無機化, 硝酸化成および共生的窒素固定に対する塩の影響をしらべた.
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