研究概要 |
本研究は, 卵蛋白質の利用加工に関する基礎的研究として, 卵黄と卵白の主要蛋白質について, 加工的機能と生理的機能を分子構造との関連から詳細に究明したものである. 実験した項目とそのまとめを示すと次の通りである. 1.卵黄低蜜度リポ蛋白質の乳化性:卵黄の主要成分である低密度リポ蛋白質(LDL)の乳化性について実験し, その乳化性は主として脂質と蛋白質が複合体を形成していることによって示されることをはじめて明らかにした. また, 乳化性の低い蛋白質についても脂質と複合体を形成させると, その性質を改良しうることを示した. 2.卵白リゾチームの加熱ゲル形成性:蛋白質の構造と機能の相関性を考えるために, 実験を行い, 適量の還元剤の添加により分子内ジスルフィド結合の一部を切断することにより, その加熱ゲル形成性が著しく改良されることを見出した. この結果はリゾチームのゲル形成機構を考える上で重要であるばかりでなく, 蛋白質のゲル形成過程における部分変性蛋白質のモデルとしても興味深い. 3.オボムコイドのアレルゲン活性:実験動物に比べてヒト血清中のIgE抗体は, オボムコイドの糖鎖部分と強く反応することを示すと共に, オボムコイドより抗原性を示す糖ペプチドを分離した. また, 化学的に脱糖したオボムコイドの抗原性は著しく低下することを示した. なお, オボムコイドのアレルゲン活性の低減化を目指して, ペプシン消化および加熱処理の影響についても実験を行った. 4.卵白アルブミンの酵素分解物の抗原性:卵白アルブミンのパンクレアチン消化物の中に, 高い抗原性を示す分子量24,000の成分が存在することを見出した. さらにラットを使ったin vivoの消化実験では, 強制投与された卵アルブミンの一部は, 抗原性を保持したまま小腸下部に移行し, その主要成分はM.W.24000の成分であると考えられた.
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