研究概要 |
東京大学千葉演習林仁ノ沢のスギ幼齢密度試験地(植裁密度 本/ha, D区=13,333, M区=6,667, S区=3,333)を対象に, 現存量, 純生産量の調査を行なった. また, 生理的過程にそった解析へ進む準備として, 光合成速度, 呼吸速度に関連した測定を試み, 以下の結果をえた. 現存量については, 林冠が閉鎖する前後の, 林齢14〜20年生の期間の資料をえた. 葉量は, 各区とも林冠の閉鎖前後に最大となり, 以後減少する. 最大時の葉量はD>M>S区で, D区は閉鎖後の自然間引きが, いちじるしい. こうした葉量変化の立木密度による差が, 光合成生産にどう関係するかは, 光環境の違いがあり, 今後の研究課題である. 幹, 枝では, 木質の蓄積によって, 林齢にともなう現存量の増加がみられるが, D区にかぎり, 葉量と平行しての枝量の減少がみられた. 枝, 葉の枯〓は, 各区とも9月〜10月が多い. 林齢20年生前後の枝, 葉の生長量は, D区が他区よりも多少小さいが, 幹の生長量と枝, 葉の脱落量をくわえた純正生産量には, 区間差, すなわち密度による差がみられない. 密度試験地の総生産量を直接, 推定する資料として, ほぼ同齢のスギ林の優勢木と劣勢木の樹冠に同化袋をがぶせ, CO_2代謝量を測定し, 日剰余生産量の季節変化などを明らかにした. 大小の試料木に, こうした数値を適用することで, 将来, 各区の総生産量がえられよう. 幹の単位樹皮表面積あたりの呼吸速度は, 最近の生長速度と密接な関係がある. したがって, 幹呼吸速度を高さで比較すると, 樹冠部分の肥大生長のさかんな位置で最大となる. ここでは, 林冠の閉鎖前後の葉の現存量の経年変化について, 興味ある結果をえた. これからは, それらと対応する純生産量, 総生産量の資料がのぞまれる.
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