研究概要 |
1.ヒトβ-カゼイン(β-CN)のリン含量はカルシウム結合数と, リンを含まない成分を除いては正の相関を示し, カルシウム沈澱性もリン含量に依存していることが認められた. カルシウム不在下では, 逆にリンの少ない方が凝集しやすく, リンの少ない成分はリンの多い成分のカルシウム沈澱を阻止する安定化作用を示した. 消化性は2%TCA可溶画分に関する限り6成分間に顕著な差違はなく, またウシβ-CNとも有意な差を示さなかった. ヒトβ-CNを認識するウシβ-CNに対するモノクローナル抗体を得ることはできなかった. 2.レクチンと赤血球の凝集阻害反応およびサーモリシン処理により生じた糖ペプチドの分析から, .ヒトΚ-CNの糖鎖にはヘテロジニティーがあること, また同一Thrにも異なる糖鎖が結合していることが示唆された. Κ-およびβ-CNとからなる再構成カゼインミセルにおいては大きいミセル程β/Κ比が大きく, Κ-CNの糖含量は小さいミセルの方が高い値を示した. 3.ウシα-ラクトアルブミンに対するモノクローナル抗体を作成し, これと各種動物の乳汁より調製したα-ラクトアルブミンとの免疫学的交差性を検討した. その結果ラジオイムノアッセイン法では, 抗体との結合性の順序は, ウシ>ヤギ>キリン>ウマ>サル>ヒト>ブタ>モルモットとなった. またそれぞれのアミノ酸組成から, ウシからの進化上の距離を計算すると, その順序は, モノクローナル抗体の場合とほぼ一致した. 4.人乳乳清及び脂肪球膜には, 組成的に類似しているものの抗体との反応性やプロテアーゼによる分解性が顕著に異なる2種の高分子量ムチン様糖蛋白質, HMGP-A及びCが存在することが認められた. HMGPは牛乳中には全く検出されなかった. HMGPの新しい精製・検出法として逆相HPLCが有効なことを明らかにした. HMGP-A及びCはマウス3T3細胞の増殖抑制効果を示すことを認めた.
|