研究概要 |
各種実験動物の摘出平滑筋の薬物に対する反応の種差と、その原因についての検討を行った。ウサギおよびラット大動脈,モルモット盲腸紐の高濃度Kおよび受容体作動薬による収縮を比較したところ、1)両者による収縮は相加的であること、2)前者による収縮時には細胞内にCa SrおよびBaが取り込まれるが、後者の収縮時にはCaのみが取り込まれることが明らかにされた。以上の成績からこれらの平滑筋にはK脱分極により開口し、Ca,SrおよびBaを通過させる電位依存性カルシウムチャネル(VDC)と、受容体の活性化により開き、Caを選択的に通過させる受容体制御カルシウムチャネル(RLC)とがあることが示唆された。つぎにこれらの二種類の収縮に対する各種抑制薬αの作用を詳細に検討した。Caチャネル拮抗薬と活性薬はK収縮に選択的に作用するが、ウサギ大動脈においてこのような選択性がもっとも強く、ラット大動脈及び盲腸紐では弱かった。また、ニトロ化合物の作用もウサギ大動脈では受容体作動薬による収縮に選択的であったが、ラット大動脈では選択性が低く、盲腸紐にはほとんど作用しなかった。ウサギ大動脈も幼苔動物のものはラット大動脈と同様の性格を示し、加令とともに選択性が増加した。ウサギ大動脈を用いていくつかの薬物の作用を検討したところハルマラアルカロイドはVDCとRLCをともに抑制し、その構造の一部を変化させると各々αチャネルに対する選択性が得られるようになった。以上の成績は平滑筋のVDCとRLCの抑制薬に対する態度には種差とともに部位差があること、さらに加令によりその性格が変化することを示唆するとともに、平滑筋の薬物反応の種差及び部位差の少なくとも一部はCaチャネルの差異によるものと考えられた。
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