研究概要 |
クリプトスポリジウムに関しては, 1975年以降, 世界各地の人, 家畜, 家禽, 愛玩動物, 実験動物を含む多くの動物での感染が知られるようになった. しかし, 日本での本原虫(CRと略す)の感染の実態についてはほとんど不明であった. このように実状を踏まえて本研究を行い, 以下の成績を得た. 1.CRは調査すればするほど, 多くの動物に感染していることが明らかとなった. 本研究中にCR感染を認めた動物は, 鶏, 子牛, 子豚, 猫, モルモット, ラット, スナネズミ, セキセイインコであって, 日本にもCRが各種動物にひろく浸潤していることが明らかとなった. これらの感染動物のうち, 臨床的に問題になるなは, 子牛の下痢症, 鶏の呼吸器病がCRによって引き起こされた時である. 2.私はCRを鶏糞から分離し, これを用いて若干の研究を行った. まず, CRの精製したオーシストを鶏に経口接種すると容易に感染が成立した. しかし, 感染後約30日後からは, 鶏体内にCRが認められなくなり, この鶏には再感染が成立しなくなった. つまり, CRには自然免疫の成立することが示唆された. CR感染鶏の組織を透過・走査両電顕的に検索し, CRの各生活史の形態を明らかにした. すなわち, トロフォゾイト, シゾント, マクロガメトサイト, ミクロガメトサイト, オーシスト, メロゾイトの形態を示したが, それらは基本的には哺乳動物におけるそれと同一であった. 鶏由来のCRの他動物への感染性を検討した. その結果, そのCRは豚, 犬に感染し, 鶏由来のCRが哺乳動物にも感染性を示し, 本原虫は人, 各種動物を通じ, 1種であろうという説を支持するものであった. 鶏のCRの集オーシストには, 蔗糖液の比重を1.18g/mlにするのが最適であることが指摘できた.
|