研究概要 |
家畜の主要な病原体の1つ, フソバクテリウムネクロホラムは種々な細胞毒性物質を産生するとされているが, その詳細は明らかでない. この点を解明することは菌の病原性発現機序を明らかにすることのみならず, 感染防御抗原の検討上からも有用な知見となる. そこで, これらの物質のうち特にロイコシジン(白血球毒)について, 分離・精製のための基礎的検討ならびに牛の各種細胞に対する生物活性を検討したところ, 以下の知見をえた. 1.本ロイコシジンは透析培養外液に認められ, 溶血毒等の他の活性物質と分別された. また, 硫安塩析, 限外〓過による濃縮物は1本の明瞭な沈降線と数本の〓い線が観察され, 容易に部分精製品がえられた. 2.部分精製ロイコシジンのマウス腹腔マクロファージに対する作用を検討したところ, 細胞表面構造物の破壊等の細胞毒性が認められた. 3.牛第一胃細胞に対する毒性を検討したところ, 細胞表面の微絨毛および膜の損傷が観察された. 4.牛肝細胞に対する作用を検討したところ, 第一胃細胞に対する所見に類似した結果がえられた. 5.本来の標的細胞である牛末梢血中の顆粒球, TおよびBリンパ球に対する毒性を検討したところ, 顆粒球に対しては, 本菌溶血素の細胞毒性に類似した顕著な細胞破壊作用を示した. 一方, リンパ球に対しては第一胃細胞に対する作用に類似した所見を呈した. 6.牛血清抗体検出のため, ELISA法により検討したところ, 抗体が検出された. さらに本法実用化のため, 抗原の精製を試み, 精製標品をえた. 以上のように, 本菌由来ロイコシジンは菌側の重要な感染防御抗原の1つであることが明らかとなった. また, 本物質による血清診断の可能性も明確となり, 当初の目的を達成できた.
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