研究概要 |
抗原特異的T細胞をin vitro長期培養することは, 同系あるいは同一固体からの抗原提示細胞を用い, T細胞増殖因子(TCGF)を利用することにより可能であることが知られていたが, T細胞株をin vivoに戻してsustemicに機能させることは内外多数の試みがあるが一致した結果が得られなかった. 本研究では, 先ずTCGFの利用時期について種々検討し, 再現性よく免疫リンパ節細胞から一定の表面マーカーを持つT細胞, TDTHを長期培養することが可能となった. 抗原刺戟4日間, 抗原刺戟休止10日間のサイクル3回以上繰り返し, その後, TCGFを加えT細胞を増殖させ, in vivo実験に用いる量が確保されるようにした. 細胞内寄生菌の例としてBCG, 呼吸器ウィルスの例としてセンダイウィルスについて, それぞれFlrut cytometryでL3T4陽性, Lut2陰性, 抗原特異的にIL2産生を伴って増殖し, 足蹠同時注射により遅延型アレルギー反応惹起能のあるT細胞サブセット(TDTH)が得られた. ヌードマウスにBCGを静脈感染し, ついでTDTH株細胞を移入して2週後の肝肉芽腫形成を調べたところ, 2×10^6までの移入細胞数に比例して肉芽腫形成がみられ, TDTHが肉芽腫形成に関与するサブセットであることが確認された. また, 摘脾マウスでは肉芽腫が少ないことから, 移入細胞は脾で再刺戟を受けることが知られ, 培養T細胞がsystamicにin vivoで機能することが明らかとなった. センダイウィルス感染マウスにTDTHサブセットを移入した場合の抗菌活性は, TDTH株とLut2陽性細胞を混合した場合の活性よりも低く, 抗ウィルス免疫にはTDTHとTcの共同作用があることが示唆された. 近交系動物の利用が困難な動物種へのT細胞株技術の応用を目的として, サルのT細胞長期培養を試み, サルTCGFの精製が行われ, これを用いて末梢血から長期培養T細胞株の樹立に成功した.
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