研究概要 |
本研究は未熟な筋細胞における広義の細胞骨格が, 発生分化する過程を学際的に研究したもので, 過去3年間の成果は次の3つにまとめられる. (1)細胞骨格の構造分化:フリーズフラクチヤーディープエッジ法および走査電顕法により観察すると, 培養胚骨格筋細胞の細胞骨格は2領域からなることが判明した. 皮質領域は主にアクチンフィラメント, 髄質は主に中間径フィラメントからなっていた. 前者の細胞骨格と細胞膜内面;および後者の細胞骨格と筋原線維との間には2〜4nmの細いフィラメントが架橋していた. 前者は細胞周期にともなって, 分布状態が変化した. これらの細胞骨格は細胞の外形の維持と筋原線維の細胞内保持に関係すると考えられた. (2)細胞骨格と筋原線維形成:培養胚心筋細胞をファロイジンおよび各種抗体(筋節蛋白質, 接着斑蛋白質)で染色して, 蛍光顕微鏡および子渉反射顕微鏡で観察した. 形成初期の筋原線維両末端部には常にαアクチニンとビンキュリンが存在し, これらの部位の細胞膜は基質とfocal contactをつくっていた. focal contactの形成と接着斑蛋白質の膜への集積は, 細胞内における筋節蛋白質の分子の分布に極性を生じ, それは筋節蛋白質の重合と正しい配列に何らかの関係をもっているのではていかと考えられた. (3)心筋トロポニン(Tn)のcDNAと遺伝子発現:鶏胚心筋のTnCとIのcDNAを分離し(それぞれCTncとCTnI), 塩基配列を決定した. これをプローブとして鶏心筋と骨格筋からRNAを分離し, Northern blot法によりmRNAの出現についてしらべるとCTnCは胚・親の心筋および胚の骨格筋とハイブリダイズしたが, 親骨格筋とは反応しなかった. CTnIは胚・親心筋とは反応したが, 胚・親骨格筋とは反応しなかった. 心筋と骨格筋におけるTnIとCのクローンの出現と変換は, 蛍光抗体法の所見とよく一致していた.
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