研究概要 |
当初の予定どおり, 非調節性分泌機能を営む副腎皮質細胞と汗細胞を中心に, これらの組織を急速凍結法で処理し, (1), 凍結置換法による包埋試料については準厚切り切片を作り, 200KVの透過電子顕微鏡で立体撮影を行うとともに, 超薄切片で得られた所見と比較検討し, 副腎皮質細胞では脂質滴と滑面小胞体の相互関系を, 肝細胞では実験条件下(フエノバルビタール投与, グルコース過剰投与)での滑面小胞体の動態を追求した. その結果, いずれの細胞でも滑面小胞体と複雑かつ多様な動態を認めたが, 最近生化学の分野で云われている「非調節性分泌は主として粗面小胞体の膜タンパクの特異なアミノ酸残基のないことによる」という見解を裏付けるような所見は得られなかった. (2), デイープ・エッチング法による解析では, 主として微細管の配列を中心に観察を進めたが, 副腎皮質細胞での微細管の発達はさほど著明でなく, 有意の所見を得ることはできなかった. しかし, 肝細胞では細胞内に分散するゴルジ野から類洞側の細胞表面膜に向って放射状に配列する微細管の発達を認めた. これら細胞骨格と密接に関連する滑面小胞の一部と考えられる輸送小胞との間には密接な位置的関係がしばしば認められたが, 糸粒体, ライソゾーム, 細胞膜隣接面に密接する小胞体とは関係なく, 肝細胞内には機能を異にする2つの滑面小胞系が存在することが示唆された. (3)佐々木は試料の凍結割断後に行うODC法を改良し, 希釈したエタノールで比較的短時間でマセレーションを行うことに成功した. この方法で得られた試料から, 網工を形成する細管状の滑面小胞体系の存在様式を副腎皮質細胞と肝細胞で明らかにした. 以上の結果を総合し, 非調節性分泌機能を営む細胞では滑面小胞体系が重要な役割を演じていることが明らかにされたが, 全ての膜系が一様でなく, 局所的機能分化があることが示唆された.
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