研究概要 |
1.プロゲステロンの呼吸調節に及ぼす影響 合成プロゲステロンの製剤, chlomadinone acetate(CMA)を用い, 血液ガス, 血液酸塩基平衡, 高炭酸ガスと低酸素刺激に対する換気の応答, などに対する効果を検討した. 呼吸刺激に由来する血液ガス, 酸塩基平衡の改善が認められ, 特に炭酸ガス蓄積の防止作用を認めた. 炭酸ガスと低酸素刺激に対しては, 換気の応答曲線の左方移動とスロープの有意の増強を認めた. 欧米で用いられる合成プロゲステロン製剤medroxy progesterone acetate(MPA)と二重盲検法により比較し, 炭酸ガス排出作用がすぐれていることを見出した. 2.プロゲステロンの作用機序に関する研究 脳内作用物質としてTRFの関与が推測され, 目下その分析が進行中である. また, 炭酸の排出に関し, ラットとモルモットを用いて血液および尿の酸塩基平衡を検討し, その生理機序の解析を行っている. 3.慢性閉塞正患者におけるCMA投与の効果 慢性閉塞性肺疾患々者(COPD)にCMAを投与し, 血液ガスおよび換気応答に関し有意の改善を認めた. とくに, 吸気抵抗負荷に対する代償作用の増強を見出したことは, 患者の増悪に対する防衛機構として有意義であると思われた. 4.COPDにおける睡眠時低酸素血症の改善 CMA投与により血液ガスの改善した群(correctors)において, 夜間睡眠中における最低酸素飽和度, 基準位からの酸素飽和度の低下度, 酸素飽和度低下の回数およびその持続時間などについて有意の改善が認められた. この所見よりCOPDの症状の進行防止にCMAが有効であるとの結論が得られた.
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