研究概要 |
血漿アルブミン分子は1個のSH基(Cys-34)と17個のS-S結合をもち、pH7〜9において、可逆的に分子内SH,S-S交換反応を行い、S-S結合の組合せの異なるA型(aged form)に変化する。この現象を血漿アルブミンの分子老化現象、N-A異性化反応と呼び、A型は生体内において容易に酵素分解されて消失する。この現象を、SH基を1個もつウシメルカプトアルブミン(BMA)を分離し、系統的に研究した。 1.SEセファデックスによるBMAの大量精製。 2.イオン交換高速液体クロマトグラフィ(HPLC,pH5.0,NaCl濃度勾配)によるN-A異性化反応の速度論的解析。N-A異性化反応を、N【→!←】Aの型の可逆一次反応と仮定した。N,Aは、それぞれ非老化型,老化型,N→A,A→Nの反応速度定数をそれぞれ【k_+】,【k_-】とすると見掛の平衡定数 Kapp=【k_+】/【k_-】となる。(1)温度効果-イオン強度〜0,pH8.6で、20゜,25゜,30゜におけるKappは、ほぼ1であった。即ち、N型,A型の自由エネルギーは、ほぼ等しい。これは【k_+】,【k_-】が温度上昇につれ、同様に増加するためである。(2)イオン強度効果-増加につれ、【K_+】,【K_-】もともに減少するが、特に【K_+】が減少し、反応はN→A方向に変化した。(3)pH効果-pH9から7へと減少すると、【K_+】,【K_-】も減少するが、特に【K_+】が減少し、N→A方向に変化した。 3.A型の構造。αヘリックス含量は、N型,A型はそれぞれ、70%,62%であった。360MHz 【^1H】-NMRより求めたN型,A型の交差緩和時間には差はなかったが、示差熱分析より求めたA型の熱変性エンタロピー変化(ΔH)はN型の約1/2であった。また、A型の分子容はN型の1.1倍であった。即ち、A型は、αヘリックス含量も減少し、分子容は増加し、【^1H】-NMR測定ではサブドメインの固さの変化はないが、熱的に、ほぐれやすい構造であろう。
|