研究概要 |
本研究は自律系ニューロンの電気生理学的特性, 化学受容性, シナプス電位等を細胞レベルで調べ, 自律神経系における情報伝達機序と修飾機構をより明らかにすることを目的として行われ, 昭和60年より3年間にわたって以下に要約した成果を挙げることができた. 1.ネコ脊髄胸節内交感性節前ニューロン 本ニューロンの静止および活動時における膜特性とイオンコンダクタンス, 化学受容性, 速および緩徐シナプス電位の発生機序と伝達物質候補, さらにノルアドレナリンによる節前ニューロン活動のモジュレーションの機構と機能的意義を明らかにした. 2.モルモット辺縁系ニューロンおよびモノアミン作動性ニューロンこれらのニューロンのうち特に海馬錐体細胞について低酸素環境の影響を調べ, 低酸素負荷による過分極・脱分極の2相性変化がCaイオンの細胞内流入に基づく1次および2次性変化であることを明らかにした. また, 側坐核においては伝達物質の1つであるドーパミンの作用とその受容体の性質を膜レベルにおいて解析し, ドーパミンはD-1受容体を介してG_Kを上昇し, D-2受容体を介してG_Kを減少させることが明らかになった. 3.交感神経節におけるペプチド性シナプス伝達 両棲類の腰部交感神経節を対象に, 節前線維に共存するLHRHとAchの遊離動態とペプチド性伝達の細胞内修飾系の性質を明らかにした. 4.モルモット腸管マイスナー神経叢細胞 盲腸粘膜下神経細胞のシナプス伝達, 特に緩徐興奮性と緩徐抑制性シナプス電位の発生機序と伝達物質および細胞内シグナルトランスダクションの機構を明らかにした. 5.モルモット心臓神経節細胞のニコチン性受容体膜のノイズ電流を解析し, 開口時間の異る2種の受容体イオンチャネルを見出した.
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