研究概要 |
各種ホルモンやオータコイドがイノシトールリン脂質代謝亢進を促し、その生理作用を発現する情報伝達系の存在は広く知られている。その際の初期反応はホスファチジルイノシトール4,5-ビスホスフェイトのダイアシルグリセロールとイノシトール1,4,5-トリホスフェイトへのホスホリパーゼCによる分解である。しかしホスファチジルイノシトール4,5-ビスホスフェイトは微量にしか存在しないためホスホリパーゼCの分解によりたちまち涸渇してしまう。よってホルモン作用持続のためにはこの脂質を再合成するシステムが必要である。よって本プロジェクトではこのステップを司どるホスファチジルイノシトールキナーゼの精製を試み、又その性質を調べた。ラット脳の上清画分をまずAffigel-Blueカラムにかけ更にDEAE-Biogelにかけた後、Superose12でゲルロ過を行った。すると分子量12万,16万,30万,40万以上の、4種に分かれた。分子量12万のホスファチジルイノシトールキナーゼに関しては更に精製を進め電気泳動的に単一にまで精製した。その際、ゲルロ過後にATP-affinityクロマトを行い、最終的にはMonoQにかけた。比活性は1250倍に上昇し、至適PHは7.0で活性に【Mg^(24)】を要求した。基質としてはホスファチジルイノシトールのみをリン酸化し、ホスファチジルイノシトール4-ホスフェイト,ダイアシルグリセロールはリン酸化しなかった。モルモット好中球の活性化はcAMPによって抑制されるが、その作用はcAMPによるイノシトールリン脂質代謝亢進の阻害にあることを示し、更にイノシトールホスフェイトキナーゼのCAMPによる直接の阻害がその阻害の一因であることを証明した。
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