研究概要 |
脂肪酸結合蛋白(FABP)の分子種と組織検索:ネズミ脳及び心筋上清より精製したB-FABP及びH-FABPは, 物理化学的性状が肝L-FABP異なるほかL-FABPに対する抗体に対し免疫交叉性を示さず, それぞれFABPの異った分子種であることを明らかにした. 脳, 心筋の上清にはL-FABPを検出できず, FABP分子種の発現は組織特異性を示した. ネズミ肝L-FABPに対する抗体を用いたネズミ及びヒトの免疫組織化学的検索から, L-FABPはネズミ肝と小膜粘膜に分布し, 食餌で細胞内局在及び濃度を変化させること, 又ヒト肝及び小腸粘膜細胞と免疫交叉し, 胎児と成人では陽性細胞の分布は異なり, 食道粘膜, 非化性胃粘膜, 膵臓, 胆のう, 細胞管は陰性で組織特異性をもつ発現と分布を示した. 2.荷電イソ蛋白の性状及び分子種の機能:ネズミL-FABPの示す荷電イソ蛋白の成因として69位Cysの共有結合修飾及びリガンドする脂肪酸種で一部説明できることを示した. L-FABPとH-FABPの機能的差異として, L-FABPとH-FABPに対するアシルCoAの結合は明らかに異なり, L-FABPが高親和性で飽和されるのに対しH-FABPは低親和性で非特異的結合を示した. 肝, 心筋の細胞顆粒が示すアシルCoA合成酵素活性に対しホスブアチジルコリンのリポソームに埋め込んだ脂肪酸が基質の場合は, L-FABPは促進効果を示した. 脂肪酸-FABP複合体を基質にしたとき, H-FABPは心筋の細胞内顆粒に対し, L-FABPは肝の顆粒酸素系で高い活性を示し, H-FABP及びL-FABPが組織特異的な顆粒を認識する可能性を示した. 3.細胞応答:刺激に伴う遊離脂肪酸の切り出しの調節にあづかるジアシルグリセロールキナーゼはブタ脳で上清, ミクロゾーム, シナプトームに分布局在し, 脳由来の酵素は肝と免疫交叉せず, グリア細胞にも検出されぬなど組織で多様性を示しすこと及びCaやサイクリックヌクレオチドに依存しない蛋白りん酸化酵素で, セリン部位がりん酸化されることを明らかにした.
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