研究概要 |
昭和41年度から57年度に至る17年間の日本病理剖検輯報について調査した結果、副腎皮質癌剖検例は226例あり、癌腫剖検数196,962例中の0.114%を占めている。年齢的には40歳以降が約80%を占め、性別では男性148例,女性78例であったが、癌腫剖検例が男性に偏っている点を考慮して補正を行うと、1.2:1の比率で男性に多かった。これら症例のうち、全国諸機関から提供頂いた正確な皮質癌91例について、以下のような各種成績を得た。 1.皮質癌の組織型をその優勢像によって分類すると、梁状ないしシート状35例(38.5%),胞巣状15例(16.5%),びまん状40例(43.9%),肉腫状1例であった。組織型と機能性,非機能性癌との間に明確な相関性はなかった。 2.皮質癌の分化度と予後との関連では、高分化癌の術後生存期間が、低分化癌のそれに比較して有意に長かったが、非手術例の場合には有意差はなかった。 3.皮質癌組織の400倍率,10視野における核分裂数を以てMitotic activityを表わすと、低分化の程度が増すほど、有意にactivityが増加した。 4.皮質癌のビメンチンに対する陽性率は70%を占め、大部分の細胞が強い反応を示した。また高分化癌の陽性率50%に対して、低分化癌80.9%と後者の陽性率が著しく高かった。 5.サイトケラチンに対する陽性率は40.6%とビメンチンのそれよりも低かった。それでも低分化癌の48.8%は高分化癌22.2%の2倍以上を示した。 6.ビメンチンに対する皮質腺腫例の陽性率は15%と低く、しかも少数細胞が弱陽性反応を示したに過ぎなかった。またサイトケラチンに対する陽性例は全くなかった。したがって、しばしば鑑別困難な副腎皮質癌と腺腫症例の組織診断に際して、この種の免疫組織化学的手法の導入は、極めて意義あるものと思われた。
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