研究概要 |
N-methyl-N-nitro-N-nitrosoguanidine(MNNG)誘発ラット胃癌の発生及び発癌過程早期の胃粘膜内CAMP依存性蛋白質リン酸化酵素活性に及ぼすガストリンの影響を検討した。その結果、MNNG投与開始4週及び8週目からのpentagastrin(300μg/kg1日2回、4週間)の併用投与は、胃腫瘍の発生を促進した。CAMP依存性蛋白質リン酸化酵素活性を発癌過程早期胃粘膜について検討したところ、ガストリンの併用投与によって、総CAMP依存性蛋白質リン酸化活性は変化しなかったものの、そのI型アイソザイムの有意な増加が認められた。胃癌組織においてもI型アイソザイムの増加は認められた。以上よりMNNGラット胃癌の発生は、ガストリンによって促進されることが明らかとなり、そのプロモーター作用には、CAMP依存性蛋白質リン酸化酵素I型アイソザイムが強く関与していることが示された。 次に、MNNGラット胃癌の発性に及ぼすセロトニンの影響を検討した。Wistar系ラットにMNNGを50μg/ml或は80μg/ml飲水混合投与(32週間)し、投与開始8週及び16週目からセロトニン(8mg/kg,1日1回,計20回)皮下投与した結果、セロトニン併用投与群のみに胃カルチノイドの発生が認められた。胃腺癌の発生は、セロトニン併用投与の影響を受けなかったが、胃脾腫は、MNNG,(80μg/ml)+セロトニン(16週目)群に有意に高頻度に発生した。発生した胃腺癌及び非癌部胃粘膜に対し、抗Ha-rasP21抗体を用いてC-Ha-rasP21の発現を免疫組織化学的に検討した結果、16例中3例(18.8%)その発現が認められた。 以上、本研究においては、MNNGラット胃腫瘍の発生が、ガストリン、セロトニンにより促進され、その発生の促進にCAMP依存性蛋白リン酸化酵素I型アイソザイムが関与すること、Ha-ras遺伝子の異常発現が一部の胃腺癌の発生に関与すること等が示唆された。
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