研究概要 |
SR-11株ウィルスをVero E-6細胞, ラットに感染させ, ウィルス抗原の局在をABC法で検索した. 1.免疫組織学的にHFRSの診断根拠としている細胞質内封入体は, ウィルス粒子そのものではなく, ウィルス粒子産生の過程で形成される副産物である可能性が高い. しかし診断的価値には変りなく, 重要な所見である. 2.(1)新生仔ラットにSR-11株を10^3FFUずつ腹腔内投与したところ, 神経症状を呈して発症し, 4週目までに死亡した. ウィルス抗原は肺, 脳, 脾臓, 腎臓, 心臓や唾液腺などに, 長期間, 局在した. (2)成熟ラットに同じ条件で接種すると, 高い抗体産生が得られたが, 臓器内で抗原はほとんど検出されなかった. (3)新生仔ラットと成熟ラットに, それぞれ腹腔内あるいは経鼻的に接種し, 抗体の産生をもとに感染価を算出したところ, ラットの年令や接種経路の相違による感染価に差は認められなかった. (4)腹腔内接種新生仔ラットでは, 接種ウィルス量が増すにつれて, 抗原と抗体の共有例も増加した. しかし, 経鼻新生仔ラットと腹腔内接種成熟ラットでは, 接種ウィルス量の多い場合にのみ肺で抗原が検出されたが, 経鼻接種成熟ラットでは, 抗体産生がみられるにもかかわらず, 抗原の保有は全く認められなかった. (5)実験感染新生仔ラット群と同居飼育された非接種新生仔ラットでは, 4例中2例で抗体産生が認められ, また肺組織でも抗原が検出された. (6)以上の所見から, 免疫学的に未熟な新生仔ラットでは, 体内に浸入したウィルスは, マクロファージ内で増殖し, 血中を介して各臓器で増殖したが, 成熟ラットでは免疫機構によって増殖が抑制され, 体内から排除されると考えられる.
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