研究概要 |
坦癌患者に見られる白血球増多の機序を明らかにするため、末梢白血球数1万以上を呈する症例からヌードマウス可移植性ヒト腫瘍11株を樹立した。これらは、口腔,甲状腺,肺,膵などを原発とする癌腫,平滑筋肉腫および慢性骨髄性白血病の急性転化時に発生した骨髄芽球腫で、殆んどがヌードマウスに白血球増多を惹起したが、株により成熟白血球と未熟白血球の比率にかなりの差が見られた。これらの腫瘍の抽出物の多くはin vitroでヒト骨髄細胞に対してCSF活性を示し、口腔原発低分化扁平上皮癌の培養細胞から、in vitroおよびin vivoで強い顆粒球コロニー産生および好中球増多を示すG-CSFが精製された。このG-CSFに対するウサギ抗体はin vitroでのG-CSF活性を阻止し、この抗体を用いた酸素抗体法で、上記口腔癌培養株の細胞内に反応産物が証明された。抗G-CSF抗体の反応産物は小胞体および核周囲腔に存在することから、これらのG-CSFは腫瘍細胞内で合成、放出され、宿主骨髄細胞に増殖,分化作用を示すことが証明された。 また、骨髄芽球腫と平滑筋肉腫を坦癌するヌードマウスは脾のリンパ球,B細胞,プラスマ細胞の著明な増加と高IgM血症を呈し、骨髄芽球腫の短期培養上清はマウスB細胞に対し、抗μ抗体でトリガーされる増殖を著明に増巾するBCGF-I活性を示した。 このようにヒト腫瘍は骨髄系,リンパ系細胞に対する多種数の増殖・分化因子を産生しており、ヌードマウス移植ヒト腫瘍はこのような腫瘍性造血因子の研究上極めて有力な手段であることが明らかにされた。
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