配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 6,500千円)
1987年度: 1,500千円 (直接経費: 1,500千円)
1986年度: 1,500千円 (直接経費: 1,500千円)
1985年度: 3,500千円 (直接経費: 3,500千円)
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研究概要 |
Carcinoempryonic antigen(CEA)は, 正常上皮細胞刷子縁のみに存在するが, 癌細胞では全表面に現われることが免疫組織化学的に証明されている. この事実に基づき, このような局在変化を示す抗原を標的とすることにより, ミサイル免疫療法を考案した. Glucose oxidaseで標識した抗CEA抗体をヒト直腸癌を移植されたヌードマウスに静注したところ, 標識抗体は正常細胞とは反応せず, 癌細胞のみと反応し, その近傍で発生したH_2O_2は癌細胞膜を酸化して膜の透過性を高め, 追って静注したヨードイオンが浸透して癌細胞は破壊された. この処置で腫瘍の著しい縮小が認められた. 本法では貧食細胞が標識抗体を取り込んでも, これを消化, 不活性化するため, ricinのような毒性物質で標識した抗体で生ずる網内系への副作用が回避できた. しかし, galactose oxidaseで代用し, それをbiotin-avidine-biotin系により抗体に結合させる方法を開発した. また, CEAは血中に溶出するため, 静注した標識抗体と反応し腎臓等に沈着する副作用が生じたので, 膜表面にあって, 上皮細胞が癌化しても血中に溶出しないがCEAと同様に分布が変化する抗原を検索した. この検索には純度の高い多量のヒト結腸上皮細胞刷子縁を必要としたので, 新しい方法を開発した. その結果, 刷子縁にのみ存在する, 分子量が数千の数種の抗原の分離に成功した. 現在はこれら抗原に対する抗体の作製及び分離を施行している. 上記のミサイル療法は, 上皮性癌細胞の除去のみならず, 臓器移植時の拒絶反応に参与する免疫細胞の選択的な除去にも応用可能と考えられる. 上皮細胞の癌化に伴う極性の変化の結果, 血管側に発現される抗原を腫瘍のミサイル治療に応用することは, 癌特異抗原を必要としないので現実性があり, 近い将来での広範囲な応用が期待される.
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