研究概要 |
ボッリヌスC型、D型菌における毒素産生能はファージによって伝達される。これらのファージは毒素産生性伝達スペクトルと中和試験などから4つのグループに分けられている。今回の研究ではこれらのうちグループ1からc-st,c-468,c-n71ファージ、グループ2からc-203,c-dbf,d-1873ファージを用いて、その核酸を抽出して種々の性状、菌体内での存在様式等について検討をおこなった。各種核酸分解酵素、制限酵素に対するファージ遺伝子の感受性を調べたところ、すべてのファージ遺伝子はDNase【I】,Exoruclease【III】により分解され、RNaseAによっては分解されなかった。またHind【III】,EcoRI,Hpa【I】,Cla【I】により切断されるが、xho【I】によっては切断されなかった。Hind【III】,EcoRIの切断断片の0.8%アガロースゲル電気泳動上のパターンによりc-st,c-468,c-n71,c-dbfのファージ遺伝子は約110kbp前後、c-203,d-1873ファージ遺伝子は150kbpの2本鎖DNAであることが示唆された。グループ1と2のファージ遺伝子はSau3A,とPst【I】に対する感受性において大きく異なっていた。切断パターンおよびドットハイブリダイゼーションにおける各遺伝子間の比較では、同一グループ内の遺伝子は類似性が大きかった。しかしd-1873ファージ遺伝子は他のどの5種類のファージ遺伝子とも類似性はあまり認められなかった。これらのファージ遺伝子と宿主DNAとの間ではハイブリダイゼーションは認められず、かつc-D6F,c-203菌体より約40Mdal,60Mdal程度の大型プラスミドが検出されたことから、ファージ遺伝子は感染菌体内において大型のプラスミドの状態で存在していることが予想された。その他認められた小型ブラスミドが毒性産生能に何らかの形で関与しているかどうかを検討したところ、これらの小型プラスミドはC型、D型の毒素産生および非産生株いずれにも共通に検出されたことから、これらのプラスミドは毒素産生性に関与していないと推察された。
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