研究概要 |
本研究は, 胃癌患者の病態と血液中または組織中微量元素の動態ならびに生体過酸化反応関連金属酵素との関係を明らかにし, さらに, 糖尿病, 肝疾患などの成人病についても同様の検討を行うことを目的として, 以下の研究を行った. 1.正常人の血液中微量元素濃度および活性酸素代謝関連酵素活性を測定し, それらの正常値を明かにした. 2.胃癌患者の微量元素濃度および活性酸素代謝関連酵素の活性を測定し, 検討した. その結果, (1)胃癌患者の血液中銅, 亜鉛, マンガンおよびセレニウム濃度は, 症度の比較的軽いStageI, II群ではすべて減少し, 進行した胃癌のStageIV群では, 銅およびマンガン濃度が上昇した. (2)胃癌患者の赤血球中catalase活性は上昇し, glutathione peroxidase(GSH-Px)活性は減少した. (3)血漿中GSH-Px活性は, 対照群と比較して有意な上昇を示し, 症度の重い群ほどその上昇は著しかった. (4)胃癌組織中亜鉛およびマンガン濃度は, 正常組織と比較して有意な低SE示した. (5)血漿中の金属結合蛋白質であるalbumin, d2-macraglobulinおよびceruloplasmin量は,胃癌患者において有意な低価を示した. (6)Stage間の比較では, StageI群に比較してStageIIIおよびStageIV群で, ceruloplasmin量が上昇し, 逆にalbumin, およびd_2-macraglobulin量は, 低下した. 3.糖尿病患者の血液中微量元素, 過酸化脂質(LOP)および活性酸素代謝関連酵素活性を測定した. その結果, (1)糖尿病患者の血液中亜鉛濃度は, 対象群と比較して有意な低下を示した. (2)患者群の血漿中GSH-Px活性および過酸化脂質量は, 対照群に比較して有意な上昇を示した. 4.肝疾患および脳血管障害患者の血液中微量元素を測定した. その結果, (1)慢性活性肝炎患者の血漿中銅濃度は, 対照群に比較して有意な低下を示した. (2)脳血管傷害患者の血液中微量元素濃度は, 対照群と比較して有意な低下を示した.
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