研究概要 |
生体微量元素およびマグネシウムの摂取量を推定するため種々の文献上のデータや実測した食品中のミネラル含有量を元にして, 独自の食品成分表を作成し, コンピューターに入力し, 食事調査を行えば種々なミネラル摂取量が計算出来るようなプログラムを作成した. このようにして算出したミネラル量は陰膳方式により実際にミネラル量を測定して得た値と良い相関が得られる事も解明した. これを用いて実際に日本人の種々な階層に対して食事調査を実施しその摂取量を推定した. そして, 糖尿病患者では国民栄養調査より算出した値に比較してZn, Mn, Cu摂取量が高い事, 成人病が多い農村では平均値で一般国民の摂取量とそれほど差が無い事, 大学のスポーツ選手で微量元素やミネラルの摂取量が低く, 栄養管理を行なう必要性がある事などが明らかになった. 又, 血清中のミネラル量を測定した結果, 血清中のミネラル濃度と同一のミネラル摂取量とは相関が少なく, むしろ, 他のミネラル摂取量と相関が見られる事があり, 血清ミネラルの低下が見られても, 直ちに当該ミネラルの不足を考えるのでは無く, 他のミネラル摂取量の異常も考慮する必要がある事を示唆した. 一方, タイ国民は血液中のミネラル濃度, 微量元素濃度が低く, 微量元素の栄養状態が悪い事も解明した. 動物実験では低蛋白質, 低エネルギーラットでMg,Ca共に胃と血液で低下し, 肝臓, 心臓, 腎臓などの臓器で増加する傾向が認められた. これには副甲状腺機能の変化が関与しているものと考えられる. 心臓中のCa/Mg比は低蛋白質, 低エネルギーラットで増加しており, 低栄養により心臓疾患が引き起こされる一つの原因になっているものと考えられる. 又, 授乳中の母ラットと仔ラットを用いた実験では授乳がミネラルの消費をかなり促進する事を明らかにした. 更に, 臨床的な研究では精神病に微量元素の代謝異常が存在する可能性が示唆された.
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