研究概要 |
各種自己免疫疾患、悪性疾患などの病態において、抗原の不明な自己抗体の存在が知られているが、ヒト型モノクローナル抗体を用いてこれらの自己抗体、対応自己抗原およびその細胞性免疫応答を解析しその意義を解明することを目的とした。ヒト型モノクローナル抗体作製に用いるヒトB細胞は、MCTD,SLE等の自己免疫疾患以外にも、抗CEA抗体を血清中に検出した大腸癌(分化型腺癌)例、抗インシュリン・モノクローナル抗体(IgG,入)を示す例、抗A1赤血球自己抗体を示すRA+SLE例および癌患者などで試みた。この中で大腸癌例の抗CEA自己抗体はNCAとは交又反応性を示さず、CEAと反応するM蛋白(IgG,K)であり、抗CEA活性のほとんどはM蛋白中に見い出され、モノクローナル抗体であることが示唆された。免疫ペルオキシダーゼ法により対応抗原の組織学的分布を検索すると、大腸分化型腺癌および胃の粘液癌、印環細胞癌とよく反応した。またCEAで吸収した血清を用いると、反応陽性部分は陰性を示した。細胞融合に用いた親細胞には、ヒト骨髄腫細胞株ARH77,プラズマ細胞系細胞株UC729-6ならびにマウス骨髄腫細胞株P3-X63-Ag8-653を用いて数十回の細胞融合を行なったが、現在のヒト型細胞株では融合効率が悪いことが判明したものの、各種ヒトB細胞とマウス骨髄腫細胞株P3-X63-Ag8-653との間には多くの融合細胞株が得られており、ヒト型モノクローナル抗体の作製に成功した。このうち胃癌患者胸水中B細胞との細胞融合で得られたヒト型モノクローナル抗体3B7(IgG)は胃癌(4/5)および大腸癌組織と強く反応したが、非癌組織(胃,大腸,肝,膵,肺)とは反応しなかった。さらに本抗体は自己の胃癌組織とも反応を示した。対応抗原の詳細については現在検討中であるが、本抗体は腫瘍関連抗原の検討さらには治療にも有用と考えられる。現在KR-4,KR-12などの新しい親細胞株をすでに入手、今後の進展が期待できる。
|