研究概要 |
臓器非特異的自己免疫疾患として, 全身性エリテマトーデス(SLE)を取りあげ, 対象症例とした. 非SLE対照として, SLE以外の全身性自己免疫疾患症例, 外科手術直後症例を含む非自己免疫疾患症例を選んだ. さらに, 健常人を対照とした. 1.活動期SLE血漿から抽出したDNAは, 約10K塩基対の大きさで, 2本鎖DNAを含んでいた. 2.SLEの血漿DNAは, Alu familyDNA塩基配列を有し, ヒト細胞由来と考えられた. 3.SLEの血漿DNAは, 自己IgG抗DNA抗体と反応した. 4.活動期SLE症例で, 流血中免疫複合体を含む4%ポリエチレングリコール(PEG)沈澱物中に, DNAを証明した. 5.SLEの4%PEG沈澱物中DNAは, 約150から200塩基対の大きさで, ヒト細胞由来と考えられた. 6.SLEの4%PEG沈澱物中DNAは, 血漿DNAと相同性を有することが確認された. 7.血漿DNA濃度は, モルキュラーハイブリダイゼーション法により, 従来の方法に比べ感度が上昇して測定され, さらに, この方法は再現性のあることが認められた. 8.血漿DNA陽性例は, SLE37例中8例, 非SLE対照14例中7例に認められたが, 健常人6例では認められなかった. 陽性例は, SLEでは, 活動性(+)13例中7例, 活動性(±)14例中1例に分布したが, 活動性(-)10例には見出されなかった. また, 非SLE対照では, 体内の組織破壊の存在を疑わせる症例に, 血漿DNAが検出された. 9.SLEでは, 血漿DNA濃度の減少とともに, Raji細胞法による流血中免疫複合体が陽性となる例が見出された. このような例では, 臨床活動性が持続し, 1日尿蛋白量も増加していた. 10.以上のことから, 活動期SLE血漿中に出現するDNAは, 自己細胞由来の2本鎖DNAで, 流血中免疫複合体を形成することにより, SLEの病態と密接に関連することが考えられた.
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