研究概要 |
糸球体腎炎や、膠原病においては、その発症に免疫機序が関与していると考えられている。これら疾患での組織病変の悪化進展には免疫反応の結果引き起される補体系の活性化や、白血球の遊走とともに、血液凝固系の活性化も重要視されている。私共は、血液凝固の際に起こる血小板の放出反応に注目し、これら疾患患者の血漿中、ならびに血小板中のセロトニンの測定を、高速液体クロマトグラフィーで行った。今回用いた方法では、1〜100pmoleの範囲で再現性よく測定が可能であった。 測定方法は、まずクエン酸採血を行い、遠心して血小板浮遊液(PRP)と血漿を分離採取した。PRPは血小板数20万ケ/μlに調製して、その400μlに除蛋白液として6M過塩素酸液20μlを加えて、遠心後の上清を測定に供した。血漿についても、同様に除蛋白を行った上清について測定した。 各疾患における血小板【10^5】ケ当りのセロトニン含量は、SLEで0.26±0.12pmole,他の膠原病では0.34±0.11,IgA腎症で0.44±0.17,非IgA腎炎では0.34±0.10,健常人では0.34±0.09であり、SLEで有意の低い値を、IgA腎症で高い値を示した。SLEの一部症例では、疾病の活動期に一致してセロトニン値が低く、病勢の改善につれて高い値を示すようになった。他の疾患群ではこのような相関は認めなかった。また、血漿中のセロトニン値はいずれも低値を示し、同時に測定したβ-トロンボグロブリン値も上昇を示した例はなかった。次に、外から血小板にセロトニンを加え、60分後のセロトニンの取り込み量を各疾患について検討したが、いずれの疾患群も健常人より高い取り込みを示した。セロトニンは小分子であり、血中に放出されても尿中へ速かに排泄される可能性が高い。SLEや、IgA腎症でみられた異常値の発症機序を解明するには、尿中排泄量を合せ検討する必要があると思われる。
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