研究概要 |
〔目的〕二重房室結節伝導路(Dual A-V Nodal Pathways 以下, DAVNPW)は発作性上室性頻拍(以下, PSVT)などの不整脈の機序として重要である. DAVNPWは, 解剖学的異常ではなく, 機能的縦解離と考えられているが, 不明な点も多い. 本研究では, これらの点と関連して, DAVNPWの経年変化, 順行性および逆行性DAVNPWの頻度, PSVTとの関係などを検討した. 〔対象および方法〕対象は, 1975年から1984年までの10年間に観血的な臨床心臓電気生理検査である心房期外刺激法を行った499例である. DAVNPWの経年変化の検討には非観血的な経食道心房ペーシング法を用いた心房期外刺激法を行った. 〔結果〕(1)6〜104ケ月(平均40ケ月)の間隔で, DAVNPWの経年変化を検討した18例中16例(88.9%)においてその再現性が確認された. (2)Jumpの大きさ, 不応期の長さにも有意の再現性を認めた. (3)DAVNPWは, 心房期外刺激法を行った499例中120例(24.0%)に認められた. (4)逆行性DAVNPWは, 順行性DAVNPWの10.5%に認められた. (5)DAVNPW例で, PSVTが誘発されたのは逆行性伝導が保たれ, また, その逆伝導能の良好な例であった. 〔総括〕DAVNPWは比較的頻度の多い房室結節伝導異常である. また, 経年的な変化を検討したところ, その出現の有無のみならず不応期などの電気生理学的測定値にも再現性を認めたことから, 房室結節の単純な機能的縦解離ではなく形態学的な異常も示唆さる結果が得られた. また, DAVNPWは興奮の旋回路となり得るものであるが, 実際に房室結節リエントリーを生じることは少ない. DAVNPWで房室結節リエントリー性頻拍が誘発されたのは, 逆行伝導が保たれ, かつ,その逆伝導能とともに順行伝導能も良好な症例であった.
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