研究概要 |
実験的検討:成犬16頭につき僧帽弁閉鎖不全および左冠動脈前ト行枝結紮心筋梗塞による高度心不全モデルを作成、体外式限外濾過法による治療効果を検討した。末梢静脈より小型送血ポンプにて採血、対側末梢静脈に返血。限外濾過膜はポリアクリロニトリル膜(50μ厚)のホローファイバー(径200μ)を使用、回路を含めた死腔は60mlで、ポンプスピードは40ml/分、200-400mmHgの濾過圧を用いた。本法施行により、右房圧低下,佐室充満圧低下,心拍出増大が得られ、血清電解質,残余窒素,クレアチニン不変,ヘマトクリット増大し、心不全改善効果が確認された。なお、本法施行時血中カテコールアミン,シニン,アルドステロン増加,末梢血管抵抗増大傾向を認め、臨床例に於ては考慮すべきと考えられた。 臨床的検討:臨床例にては、利尿剤,強心剤,血管拡張剤等に反応しない、全身溢水状態の著明な心不全例に対して応用。上記のような死腔容積の極力小なるフィルター,回路を使用、血流速度100ml/分前後,加圧100〜200mmHg,除水50〜200ml時,10時間前後の持続濾過法,比較的慢性な経過をとる例では、1回1000〜3000mlの除水を2〜4時間で連日または隔日に反復施行する方法が有効であった。これらの緩徐な除水では、血圧低下,交感神経緊張反応を見る事なく、静脈圧,左室充満圧の低下,心拍出量,尿量の増加,諸臓器うっ血,間質浮腫所見の改善を認める。ただし、心膜疾患症例等本法施行により却て血圧低下等循環動態悪化を認める場合もあり、急速徐水法の安全性,有効性の検討も併せ、さらに今後症例を重ねて検討継続の予定である。
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