研究概要 |
本研究は動脈硬化度の定量化を計るための基礎資料を得ることを目的として, 動脈硬化を自然発症する遺伝性高脂血家兎(WHHL rabbit)の大動脈における左脈波の月令依存性を調べるとともに硬化動脈壁のレオロジー的および形態学的検索を行なった. 方法:WHHL rabbitをネンブタール麻酔後, 2本のカテーテル型左力トランスジューサを左総頸動脈から大動脈3部と右大腿動脈から胸部大動脈と腹部大動脈にそれぞれ挿入して左脈波を測定した. 一方, 大動脈内膜面における粥状硬化班の面積比率を面積測定機で計測するとともに動脈壁の応力-ひずみ曲線を引張試験機で測定した. 結果と考察:脈波速度は胸部大動脈, 腹部大動脈ともに加令に伴い増大していった. 脈波波形は各部位において加令により変化した. その共通点としては第1に波高が増大するpeaking現象が見られることである. 第2にdicrotic notchとdicrotic waveが不明瞭になり, 脈波全体がmonophasicな硬化性波形を呈することである. 一方, 胸部大動脈において, 壁厚と月令の間には0.66(P〓0.01)の正相関が得られた. また, 応力-ひずみ曲線より弾性率を求めること, 5×10^5dyn/cm^2と10^6dyn/cm^2において加令により増大した. したがって, WHHL rabbit大動脈における脈波速度の増大とpeuking現象は硬化性変化による壁弾性率と壁厚の増大によるものと思われる. 粥状硬化班は生後2ケ月ですでに大動脈弓部に発現した. この初期粥状硬化の発生頻度は大動脈弓部で最大, 腹部大動脈で最少であった. 粥状硬化班の初期における発生部位は大動脈弓部, 胸部大動脈および腹部大動脈上部にある分岐動脈基部に限局していた. しかも, その流出口周辺の分布状態は分岐動脈によって異なった. 以上より, 大動脈における初期粥状硬化の発生には分岐部位における局所的な血流状態が関与していることが示唆された.
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