研究概要 |
乳児ビタミンK欠乏性出血症における肝機能の関与について一連の研究を行った. 生後3週のヘパプラスチンテスト(Hpt)スクリーニングで, Hpt50%未満の児の肝機能を追跡し, 2ヵ月以上追跡できた9例中8例に肝機能異常を認めた. また発症例2例に肝生検を行ったところ, いずれも巨細胞性肝炎の像を示した. この結果より, 肝機能の未熟による凝固因子活性化不全が本症の背景に存在するのではないかと考え, セルロプラスミンを始めとしたrapid turnover proteinの測定を行った. その結果, 予想に反し, これらのrapid turnover proteinは, 肝機能の未熟性を示す低値ではなく, いずれも著しく高い値を示し, 胆汁うっ滞の存在が示唆された. この結果から, ガスクロマトグラフィーを用いて乳児ビタミンK欠乏性出血症発症例, ニアミス例の血清胆汁酸分析を行った. 8例の症例における血清胆汁酸パターンはいずれも著しい胆汁うっ滞パターンを呈した. 以上の結果から, 本症の発症要因として, 消化管内への胆汁酸分泌不全によるビタミンK吸収障害が重要な役割を持つことが明らかとなった. 次いで, 早期および後期新生児期の血清総胆汁酸値について検討したところ, 本症の発症が集中する生後1ヵ月に, 生理的に胆汁うっ滞を示すことが明らかになった. さらにこの生理的胆汁うっ滞と, 経口投与したビタミンKの吸収, 血漿PIVKA-II値について検討した. 生後5日の成熟児194例に対し, K2シロップ2ml(menaquinone-4として4mg)を経口投与した後の血中濃度は, 100倍以上の著しい個人差を認め, PIVKA-IIと強く関連していた. 投与3時間後の血中濃度が測定限界以下であった7例の児では, 1例を除き, 生後3週のPIVKA-IIも陽性であった.
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