研究概要 |
シングルフォトンエミッションCT(HEADTOME)による局所脳血流(rCBF)の測定に関する基礎的課題として, 画質, およびrCBF測定値の精度の向上について検討した. 臨床的には, 痴呆患者のrCBFを測定し, 健常者のrCBFとの対比も行った. 1.基礎的課題について:Xe-133のγ線エネルギーは81KeVと低いため, 深部での空間分解能と定量性が著しく劣化する. これを改善するために, 81KeVのphoto peakに対し, 75〜110KeVの非対照なウィンドウレベルを設定した. 更に, 128個のシンチレーション検出器のウィンドウレベルのチェックと調製を容易にする機構を開発した. これによって, 分解能はFWHMで15mmと大巾に改善された. rCBF測定値の精度を左右する因子として, Xe吸入装置の設定と吸入法, 頭部データ収集の開始時期, 及び鼻腔内Xeの散乱線が考えられた. これらの因子を詳細に解析し, 誤差や不安定要素が最小となる対策を検討し実施した. この対策により, 測定手技に起因する測定誤差も著明に改善された. 炭酸ガス分圧(PaCO_2)が脳血流を鋭敏に左右する事はよく知られているが, 日常検査では動脈血採血を要するためその補正は省かれているのが現状である. マウスピースによる呼吸は, 呼吸パターンの変動をもたらし, それによるPaCCO2の変動は脳血流測定上無視出来ない程大きい事がわかった. 煩雑な動脈血採血を伴わないで呼気ガス中の炭酸ガス濃度による脳血流補正法を確立した. この補正により, 特に経過追跡間の軽微な変動の測定精度が向上した. 2.臨床的課題について:アルツハイマー病(AD), 多発梗塞性痴呆(MID)のrCBF像を撮り, ADでは側頭頭頂部の特異的な低下, MIDではひまん性の低下パターンを示す事がわかった. 又, AD患者の側頭頭頂部のrCBF低下の程度は長谷川式痴呆スケールによる痴呆の程度と極めて強い相関が認められた. 精神神経疾患への応用も可能となった.
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