研究概要 |
糖尿病を遺伝子レベルでしらべ, そのリスクフアクターについてしらべようとする研究は(1)インスリン遺伝子, (2)インスリン変容体遺伝子, (3)HLA遺伝子について行われた. 本研究では従来インスリン依存型(I型糖尿病)の発症に免疫機構の関与がありしたがってHLAの深い関与が示唆されていたが, 抗原抗体反応を用いて明らかにされて来たHLAのタイプによる分類では糖尿病患者の特徴を明らかにすることは困難であり, 特に我国では高い相対危険率を得ることが出来なかった. そこでHLAの遺伝子レベルでの研究が必要とされた. 特にHLAタイプが欧米と著しく異なる我国での研究は有用であると考えられていた. しかしながら我国での研究の困難性はI型糖尿病患者数が著しく少ないことである. 我々は確実にI型糖尿病と考えられる患者と, それと血縁的なつながりの無い非糖尿群につきHLAをしらべたが有意な相対危険率を示したのはDR4とDRgでありどれも余り高いものではなかった. 私達はこれからの患者のDNAを血液より抽出て制限酵素にて切断しSouthern-Hybridizationを行った結果HLA-DQβ遺伝子のプローブでBamHIによる4.5, 4.9, 5.6Kbフラグメントに有意差が認められた, この結果は欧米の報告と異なり今後さらに分析を要すると思われるが大変興味深い. DQβ遺伝子は少なくとも我国のI型糖尿病患者の発性と何らかの関連があると思われる. 私達は以上の検討のほか欧米の研究からI型糖尿病と関連のあるといわれているインスリン遺伝子の5側上流も検討したが欧米で認められるような非糖尿病者とI型糖尿病者との間には差が認められなかった. I型糖尿病のモデル動物であるNODマウスの自己免疫状態についての検討も行ったがきわめて決定的なI型糖尿病発症の機構についてのdataは得られなかった. 種族, 人種の特異性の問題と考えられる.
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