研究概要 |
ヒトGHRH-(1-44)-N【H_2】のC端特異抗体(自家製)を用いて高感度(1.pg/tube)のRIA系を確立し、ヒト各種組織,脳脊髄液および血漿中の成長ホルモン放出因子様免疫活性GHRH-LIを測定した。組織中GHRH-LIは視床下部正中隆起に最も高濃度に存在したが、胃,膵臓,腸管にも低濃度ながら明らかに検出された。末梢血中GHRH-LI値は、正常者にインスリン低血糖刺激やL-dopa負荷をする時、血漿GHの上昇にほぼ一致して増加したが、視床下部に器質的障害があり視床下部のGHRHの分泌不全の存在する患者ではこれらの刺激後に血漿GHRH-LI値は増加しなかった。これらの成績よりインスリン低血糖やL-dopaによるGH分泌亢進の機序の少くとも一部には視床下部からのGHRH放出が関与していること、更にこの視床下部GHRH放出は末梢血中の濃度変化として観察されうることが明らかとなった。また脳脊髄液中GHRH-LIの起源は視床下部弓状核が主要なものであり、この部位の破壊,障害は脳脊髄液中GHRH-LI濃度の低下をもたらすことも明らかとなった。特発性下垂体性小人症では、約40%の患者でL-dopaやインスリン低血糖刺激後の血漿GHRH-LI増加反応が消失し脳脊髄液中GHRH-LI濃度は低値を示したが、残りの約60%の患者では脳脊髄液中GHRH-LI濃度はやや低いもののL-dopa等による刺激後の血漿GHRH-LI値の増加は観察された。病因として前者は視床下部GHRH分泌不全が考えられるが後者の場合には視床下部GHRH分泌不全はむしろ軽微で下垂体自体の障害の可能性が高いと考えられた。先端巨大症患者において未治療の活動性例の大半で脳脊髄液中GHRH-LI値は正常乃至高く、L-dopa投与後末梢血中のGHRH-LI値は増加した。しかし放射線療法を過去に受けた患者では脳脊髄液中GHRH-LI値は低くL-dopa負荷後の血中GHRH値の増加も見られず、血中GH値も低く安定していた。従って視床下部GHRHは先端巨大症の活動性を高める増悪因子として作用する可能性が考えられる。
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