研究概要 |
HL-60細胞は10%FCSを含むRPMI-1640培養液中でdoubling time20hにて培養可能となり、1.25-dihydroxy Vitamine【D_3】(1,25【D_3】)、【10^(-9)】〜【10^(-7)】Mの範囲で用量依存性に増殖が抑制され、monocyte macrophageに分化する事を確認した。以上の条件において1.25【D_3】のHL-60細胞分化過程でのポリアミン代謝の影響を示べた1.25【D_3】、【10^(-8)】M添加後1日目に、ポリアミン合成律速酵素であるオルニチン・デカルボキシラーゼ(ODC)はコントロールに比ベ3倍の活性上昇が見られその後経時的に低下した。もう一つの律速酵素であるスペルミジン-´N-Tセチルトランスフェラーゼ(SAT)も、1,25【D_3】添加により経時的にその活性加上昇した。これらの結果、HL-60細胞内ポリアミン・レベルは、プトレシンについては増加、スペルミジン、スペルミンについては減少した。これらポリアミン代謝の変動の1,25【D_3】のHL-60細胞分化誘導に及ぼす生理的意義を検討する為、ODC阻害剤であるα-ジフルオロメチルオルニチン(DFMO),S-アデノシルメチオニンデカルボキシラーゼ阻害剤のメチルグリオキサールビスグアニルヒドラゾン(MGBG)を用いて検討したが、これら薬剤は酵素阻害により1,25【D_3】によるプトレシン合成促進を抑制したにも拘らず、1,25【D_3】のHL-60細胞分化誘導は非添加時と変わらず認められた。さらに、スペルミジン、スペルミンの低下が分化誘導にとり重要である可能性がある為、培養液中にスペルミジン、スペルミンを加えて細胞内含量を増加させた状態で1,25【D_3】のHL-60細胞分化に及ぼす影響を観察したが変化は認められなかった。以上の事実より、1,25【D_3】はHL-60細胞を分化誘導させ、一方でポリアミン代謝に影響を及ぼすが、1,25【D_3】のポリアミン代謝に及ぼす影響は分化誘導作用と独立して働いているものと思われた。
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