研究概要 |
1.糖尿病患者の両親の解析:30歳以前に発病した糖尿病患者44名(【I】型16名,【II】型28名)の両親に100g糖負荷試験を行った。【II】型糖尿病の両親では39%が糖尿病,12%がIGT,【I】型糖尿病の両親では9%が糖尿病,9%がIGTで、【II】型の方が高率であった。インスリン分泌低下者の比率は【I】型の親では43%,【II】型の親では66%であり、耐糖能正常者のみについてみると各33%,35%であった。【II】型糖尿病では両親がともに低反応者である場合が多く(58%)、【I】型では片親のみが低反応の場合が多かった(67%)。両病型ともインスリン分泌低下には遺伝的背景がうかがわれるが両病型で遺伝様式は異ると考えられる。 2.異常インスリン患者家系の分析:異常インスリン症の発端者の膵からえたインスリンでは正常インスリン:異常インスリンの比はほぼ等モルであるが、異常インスリンの方が代謝速度が遅く血中に蓄積する結果,高インスリン血症を来すことがわかった。アミノ酸分析の結果,インスリン分子の異常部位はA鎖3位で、バリンがロイシンに置換されていることが明らかとなった。また異常インスリンの尿への排せつは著しく低下していることがわかった。 3.ヒトプロインスリンのラジオイムノアッセイの開発とプロインスリン分泌動態:ヒトプロインスリンでモルモットを免疫し、6匹中1匹でインスリン,C-ペプチドと交差反応しないヒトプロインスリン特異抗体がえられ、これを用いて高感度のラジオイムノアッセイ系を開発した。未治療糖尿病患者ではプロインスリン値は上昇しインスリンに対する比率も上昇した。糖負荷後のプロインスリン上昇反応は軽症〜中等症の糖尿病患者では増加し、これは膵B細胞が過大な刺激を受けている状態を表しているものと考えられた。
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