研究概要 |
血液凝固亢進状態の診断に活性凝固因子-インヒビター複合体の検出が有用なことが最近注目されている. 本研究は世界に先がけて活性IX因子-アンチトロンビンIII(IXa-ATIII)複合体の高感度免疫学的測定法の確立に成功した. まずHar・pelの方法に準じてポリスチレンボールを用いるELISAを試みた. 一次抗体として抗AT-III抗体, 二次抗体としてβ-ガラクトシダーゼ標識抗IX因子抗体(又はその逆)を用いて精製IXa-ATIII複合体を1ng-1μg/mlの高感度で測定できた. しかしながら血漿の存在下では測定感度が30ng〜1μg/mlと低下した. この原因は, 血漿中のfreeATIIIやfreeIX因子が複合体と競合すためと考えられ, この方法は臨床材料の測定には不適当と思われた. この欠点を克服するためにKatoらの方法(Methods in Enzymol 92:345, 1983)を応用した. 測定は, プラスチック製ミニカラムに抗ATIII抗体結合チオールセファロース100μlをつめ, N-エチルマレイミドを含むbufferで洗浄後, 100倍に稀釈した検体をカラムに通す. その後β-D-ガラクトシターゼ標識抗IX因子Fab'をapplyしbufferにて洗浄後, 25mMジチオスレイトールを含む緩衝液で複合体を溶出する. 溶出液に基質4-メチルウンベリフェ±ノルーβ-D-ガラクトシドを加えて反応させ蛍光強度を測定する. 本測定系の感度は精製IXa-ATIII複合体(5ng-3μg/ml)で, かつ正常血漿存在下でも同様の高感度(血漿中のIX因子0.05%の活性化を検出できる)を示した. すなわち本法は血栓症の予知に臨床応用可能と思われた. 10名の健康人血漿中のIXa-ATIII複合体はいずれも5ng/ml以下であった. 又血清においては2μg/mlを示した. 一方DIC患者では100ng/mlと高値を示し, かつDICの治療とともに複合体レベルは低下した.
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