研究概要 |
(1)ポリリジンで被覆したマイクロウエハにヒト血液細胞を低濃度で浮遊させ、遠心して充分に付着伸展,Prickingする遺伝子導入法を確立し、プラスミドgAEIA導入を行って単球系細胞株,臍帯血単核細胞,慢性骨髄性白血病細胞,各々から2,3,5個のミコフェノール酸耐性クローンを得た。DNA-リン酸カルシウム共沈法に比べ、高効率でEco-gptを導入発現させ得、幹細胞など少数の特定細胞へ遺伝子導入が可能となった。 (2)1/【10^3】-1/【10^4】の頻度で造血系に存在する幹細胞を単細胞微細操作装置で単離,1個の幹細胞に対する多能性造血因子IL-3の役割,系統特異性のエリスロポエチン(Ep)の作用を明らかにした;a)IL-3は直接、多能性幹細胞に作用、顆粒球,マクロファージ,巨核球の分化を支持する;b)赤芽球系分化の最終段階にはEpが必要である;(c)IL-3は分化方向決定ではなく、増殖,分化を支持する;(d)造血因子は幹細胞,前駆細胞の増殖開始の引き金ではなく、増殖を支持するだけである。 (3)IL-3依存性細胞株FDC-P2はA-MuLV感染で因子非依存性に増殖するが、IL-3産生やIL-3リセプター発現は認められないので、この形質転換のAutocrine機構は否定される。因子非依存性クローンが予め存在,A-MuLV感染後、増殖能が増大する。 (4)A-MuLVをマウス胎児細胞に感染させ、肥満細胞や巨核芽球様細胞株を樹立した。これらの細胞は因子非依存性に増殖する。 (5)NFS-60細胞株はNFS/Nマウスに白血病ウイルスCas-Br-M-MuLVを感染,樹立された骨髄性白血病細胞株で、IL-3,G-CSF依存性に増殖,癌遺伝子c-mybの再構成があり、前期ウイルスが組込まれている。IL-3添加で好中球とマクロファージ,GM-CSFでマクロファージ,Epで赤芽球に分化し、G-CSFでは殆どが芽球のままであった。 (6)多分化能を持つ芽球コロニーを前脂肪細胞MC3T3-G2/PA6と共培養すると、CSF無添加で好中球,好酸球,肥満細胞,マクロファージ,巨核球へ分化した。PA6には種々の造血因子mRNAが同定されず、芽球コロニー維持には細胞間接着が必要である事から、既知の造血因子を介さない造血微小環境よる造血調節機構が示された。
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