配分額 *注記 |
5,200千円 (直接経費: 5,200千円)
1987年度: 1,400千円 (直接経費: 1,400千円)
1986年度: 1,800千円 (直接経費: 1,800千円)
1985年度: 2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
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研究概要 |
本研究で得られた研究成果は以下の5点にまとめられる. 1.ジメチルニトロサミンの投与で非可逆的肝硬変モデルの作成を試みたが, ラットの死亡率が約90%と高く, 数匹のラットにしか肝硬変を作成できなかった. 四塩化炭素投与では効率よく肝硬変を作成でき, 肝硬変細胞の脾臓内移植実験を行ない, 硬変肝細胞の特性を検討できた. 2.四塩化炭素投与により作成した肝硬変から分離した硬変肝細胞脾臓内移植実験の成績から, 硬変肝細胞は正常肝細胞以上の旺盛な増殖力をもつと考えられた. また, フローサイトメトリーよる硬変肝細胞の細胞動態的変化では多倍数体化が進行すること, 細胞内の蛋白量が減少すること, 70%肝切除後緩徐なDNA合成が長時間継続することが明らかとなった. 3.同僚の四塩化炭素を投与しても脾臓内再構築肝の線維化の程度は一定せず, 肝細胞の障害程度の差による膠原線維増生度の相違の定量的解析は困難であったが, 障害の程度が高いほど線維化の程度が強い傾向が認められた. 4.ヒト肝硬変細胞の分離に関しては独自に開発した多肢潅流法および再潅流式チャンバーを用いることにより, 大きな肝組織からでも, 0.5g程度のごく少量の肝組織からでも, 十分な収量の肝硬変細胞を分離できた. これら肝硬変細胞分離法の確立により, 以後の検索が容易になった. 5.フローサイトメトリー法を用いて肝硬変細胞の細胞生物学的特性を検討するための方法論を確立できた. 臨床的検索においては, 2例ではあるがDNA aneuploidyを示した肝硬変を認め, 肝硬変が前癌病変としての意味あいをもつものと考えられた. また肝癌細胞がDNA aneu-ploidyを示した症例の生命予後は不良の傾向があり, 細胞生物学的特性の検索により, 肝硬変からの発癌予知と肝癌の悪性度を知る新たな指標が生まれる可能性を見いだせた.
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