研究概要 |
1.肝内結石症切除肝の検討:肝内胆管の3次元全体像は膨大部の連続する数殊状の形、扁平化と折れ曲りの連続する蛇腹状の形など複雑な褶曲構造を呈していた。狭窄部は一般に分岐部に存在し、その形態はbotllenerk状,slit状の2型に区別された。胆管径の組織計測から狭窄部でさえ実際は拡張しており、狭窄部はその前後の胆管が著明に拡張したために形成されたみかけ上の狭窄であることがわかった。これらの結果から胆管の形態変化の本質は拡張であろうと推察された。初期の拡張形態は単純なspindle状であり、その変形は次第に高度になってゆくが、その過程は門脈病変との関連で説明可能であった。門脈には胆管炎の波及による血栓形成があり、それは分岐部に好発し、直径0.5mm程度の門脈第3,4分枝は血栓性に強く狭窄していた。肝実質には門脈血流の減少に伴う高度の萎縮があり、残存実質量は平均36%であった。この事実は肝組織において胆管拡張と肝萎縮が同時に生じていることを示すものであるから、胆管の形態変化を考えるうえで、肝萎縮に伴う変化を考慮する必要があろう。すなわち、胆管拡張は直径を増大する方向と同時に長軸方向にも生じており、他方組織の収縮する力は胆管にも加わるから、胆管は屈曲,圧排されて高度に変形した形態を呈するようになると考えられた。これらの成績から、胆管の高度変形,門脈狭窄,肝実質萎縮を伴った病変部肝組織は胆管炎の母地となるばかりでなく、組織学的には機能廃絶の状態にあり肝切除の必要性が示唆された。 2.肝内結石症モデル犬の検討:十二指腸乳頭部へのホルマリン液注入による胆汁うっ滞,胆管のtoping,門脈結紮による肝内結石症モデル犬では、相対的狭窄部末梢の胆管は棍〓状に拡張し、壁の肥厚がみられた。肝実質には虚血性の巣状壊死が小葉中心性に生じていた。このモデルは有用であり、今後さらに検討が必要である。
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