研究概要 |
各胆道再建術式の優劣の判定を行うため, 犬を用い実験的にRoux-Y式胆道再建術と十二指腸間への有茎空腸間置術を行い, 術後の小腸運動を比較検討した. 小腸運動は銀針双極電極による筋電図と, フォーストランスジューサーによる収縮曲線を, 意識下連続導出記録し解析した. また, 各術後, 2週間〜1ケ月目の短期例と, 6カ月以上の長期例について経時的変化を比較検討した. さらに胆汁の影響を検索するため, 上記術式の空置術犬(非胆道再建犬)も作製し, 比較検討した. 以下に結果を述べる. 1.筋電図上のBER(basic electric rhythm)にSP(spike potensials)が重積している時にフォーストランスジューサーでも強収縮がみられ, 頻度・強さもよく一致していた. 2.BERの頻度は毎分, 十二指腸で19〜20回, 空腸口側18〜19回, Roux-Y脚空腸約13回, 空腸肛門側13回, 間置空腸約13回, その空腸肛門側11回と, 腸管切断部よりBERの減少を認めた. この頻度は6カ月〜1年目の長期犬でも同様で, 経時的変化や回復は認めなかった. 3.空腹期MMC(migrating myoelectric complex)の伝播を検討したところ, 術式特有の適応運動が認めらた. 1)Roux-Y犬:短期例に比し長期例では十二指腸〜空腸口側〜空腸肛門側へ直接伝播する頻度が増加していた. また, 胆道再建腸管であるY脚空腸よりMMCが頻回に発生し, 空腸肛門側へ伝播した. 2)空腸間置術犬:短期例に比し長期例では, 十二指腸〜空腸口側〜間置空腸〜空腸肛門側への本来の伝播様式が減少し, 間置空腸に発生したMMCが, 十二指腸〜空腸口側〜空腸肛門側へ伝播する頻度が増加していた. 以上より, 胆道再建術後早期は, 本来の連続性を保った伝播様式が多く, 外来神経支配が優位と考えられた. 術後長期には, 再建術式に合った適応運動が観察され, 壁内神経や腸内容が重要と考えらた. 従って, 間置術後の早期では, 胆汁の停滞が起こり易いと推測された.
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