研究分担者 |
西浦 清昭 長崎大学, 医学部付属病院, 医員
富岡 勉 (冨岡 勉) 長崎大学, 医学部付属病院, 医員 (30231450)
井沢 邦英 長崎大学, 医学部, 講師 (40124820)
角田 司 長崎大学, 医学部, 講師 (00110841)
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研究概要 |
急性膵炎, 慢性膵炎いずれにおいても成因が種々であり, さらに急性膵炎と慢性膵炎との関連性も病理形態学的, 生化学的に未だ解明されていない. 本研究においては最も基礎的な膵と胆管の関係を検討することにより, 膵の急性変化と慢性変化, ひいては急性膵炎と慢性膵炎の関連性を追求した. まず家兎の膵十二指腸動脈根部をシリコンパイプにて軽度狭窄をした軽度膵虚血群では, 2週目より動脈壁内膜の肥厚と同時に脂肪置換がみとめられた. 一方, 高度虚血群では一週目より膵実質壊孔巣, 脂肪置換像のほか, ヒト慢性膵炎像に類似した膵腺房の変成, 消失, 小膵管増生像, 膵小葉内外の線維化が高率に認められた. 更に膵と各種脈管との関係を知る目的で犬を使用し実験した. 膵管結紮のみでは膵管周囲や小葉間, 小葉内の線維化がみられ, 膵管と膵動脈の同時遮断では, 膵管周囲や小葉間, 小葉内の線維化は膵管単独結紮より強く, 加えて膵管遮断のみではみられない膵脂肪置換がみられた. また, 膵管をまず結紮し, その数日後に膵動脈を異時的に遮断すると, より高度な膵の線維化と脂肪置換がみられ, ヒト慢性膵炎に酷似した組織像を呈した. 特に動脈遮断後4週目では膵被膜に近い部に脂肪置換が発生した. 同時に主膵管近傍の小葉内の壊孔巣に線維芽細胞が出現し, 8週後には健常組織と脂肪置換部は完全に境界され, 3日から1週までの間に観察された小葉内の急性浮腫は完全に消失した. 静脈, およびリンパ管遮断群は遮断初期にそれぞれ血流のうっ滞とリンパ流のうっ滞がみられるのみで膵の急性および慢性変化には重大な影響を及ぼさなかった. これらの事実から, 膵の変動は膵の外分泌液のうっ滞と動脈血流障害が重要であることが判明し, 急性膵の変化から慢性膵炎の発生の機序に大きな示唆を与えた.
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