配分額 *注記 |
6,800千円 (直接経費: 6,800千円)
1987年度: 1,200千円 (直接経費: 1,200千円)
1986年度: 2,500千円 (直接経費: 2,500千円)
1985年度: 3,100千円 (直接経費: 3,100千円)
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研究概要 |
モノクローナル抗体の導入により, 単一抗原にのみ選択的に反応する特異性の高い抗体が無尽蔵に得られるようになり, 医学, 生物学は大きな進歩をとげつつある. 本研究ではこのモノクローナル抗体を, 消化器癌の診断と治療に応用するための基礎的ならびに臨床的検討を行った. その結果, 胃癌の中でも診断が最も困難で予後の悪いスキルス胃癌のモノクローナル抗体と, 大腸癌に特異性の高い新しいモノクローナル抗体を作製することができた. スキルス胃癌のモノクローナル抗体は, 摘出胃癌組織と酵素抗体法(ABC法)で高い反応性を示し, とくにスキルス胃癌に対して100%に反応した. 次に, このモノクローナル抗体をスキルス胃癌の組織診断とくに手術中の迅速診断への応用を試みた. 15分で鏡検できる新しい迅速酵素抗体染色法を開発した結果, 術中に速やかにスキルス胃癌の組織診断が可能となり, 切除断端の術中診断や転移の有無の組織診断も容易となった. 大腸癌のモノクローナル抗体と抗癌剤とを化学的に結合させた複合体を作製し, 基礎的に検討したところ, 癌細胞に極めて選択毒性が高くこの複合体は, これまでにない癌選択性の高いTargeting療法として有望であることが明かとなった. そこで, この複合体を大腸癌患者に対して臨床的に初めて応用した. 複合体は大腸癌に特異的に集積し, しかも癌細胞質の中まで取込まれることが明らかとなった. また, 複合体投与により肝転移の縮小や症状の寛解例も認められたが, 重篤な副作用は全くなかった. これらの結果から, モノクローナル抗体をcarrierとした新しいTargeting療法あるいはミサイル療法の可能性が臨床的にも示された. これまでモノクローナル抗体単独を臨床的に応用した報告は欧米にあったが, ミサイル療法の報告はこれが最初でありCancer 61:881-888, 1988に掲載された.
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