研究分担者 |
渡壁 誠 旭川医科大学, 医学部, 助手 (70182946)
岩原 敏人 旭川医科大学, 医学部, 助手 (80133817)
熱田 裕司 旭川医科大学, 医学部, 助手 (90167924)
平山 隆三 旭川医科大学, 医学部, 講師 (10110644)
竹光 義治 旭川医科大学, 医学部, 教授 (00038663)
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研究概要 |
本研究では, 個々の動物の精髄循環血流量を3つの異る時点で計測し, 牽引による影響を調べ得たところに意義がある. この方法としてスペクトルの異る3種の放射性同位元素Ce, Cr, Sr, をラベルした15μmのmicrosphereを左心室を介し数10万個注入した. 注入した時点は牽引前, 牽引中, 牽引解除後の3回である. 牽引中の脊髄傷害は下行性伝導性脊髄誘発電位を連続的に記録し, 第1電位の振幅の低下と潜時の延長をもって障害ありと判定した. 振幅と潜時の変化程度により次の4群に分類し, それぞれに対応する脊髄血流量を算出した. 第1群:潜時の遅延のみで未だ振幅の変化がないもの, 第2群:振幅の低下が20%までのもの, 第3群:振幅の低下が20%から50%未満, 第4群:振幅の低下が50%以上のものである. 結果を要約すると第1群に与えたごく軽度の牽引では脊髄血流量が脊髄全体で増加していたことから静脈の潅流障害が最も考え易い. 牽引の程度を徐々に強めていくと当然のことながら血流量は低下していく. 第2群の程度の牽引では第1群に近い循環動態を示す動物と, 逆に牽引の応力が最もかかる部分の血流量が減少する2つのタイプに分れた. いづれも牽引力解除により血流量は元に戻るか増加した. 第3群では, 牽引部の血流低下が明瞭になってきたが, それ以外の部分では血流が増加した. 牽引解除により牽引部の血流が著しく増加した. さらに牽引を強くした第4群では, 脊髄全体の血流量が減少し, 特に牽引応力の最もかかる部分では牽引解除しても血流の回復を認めなかった. 第4群でみられた点は, きわめて重要である. すなわち, 脊髄誘発電位が50%以下になると脊髄循環のauto regulation機構が破壊され, しかも不可逆性であることである. 言い換えると, 発生した脊髄障害が回復可能かどうかの分岐点は脊髄誘発電位の電位変化の観察により予測できるといえる.
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